フリースクールから見た2021年度(令和3年度)不登校児童生徒数が過去最多になった5つの理由と課題

今年も恒例の前年度の不登校児童生徒数が発表された。
さて、今年はどんな数字を叩き出すのかとフリースクールスタッフ内や各市の教育委員会の方々とお話ししていてもよく話題に上がっていた。

小・中学校における不登校児童生徒数は244,940人(前年度196,127人)であり、前年度から48,813人(24.9%)増 加。
在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は2.6%(前年度2.0%) 。
過去5年間の傾向として、小学校・中学校ともに不登校児童生徒数及びその割合は増加している (小学校H28:0.5%→ R03:1.3% 、中学校 H28:3.0%→ R03:5.0%)。
不登校児童生徒の63.7%に当たる156,009人の児童生徒が、学校内外の機関等で相談・指導等を受けている。
不登校児童生徒数が9年連続で増加、約55%の不登校児童生徒が90日以上欠席している。

文科省:令和3年度
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

24万5千人!?
正直去年と同じ増え幅くらいだとしても22万人くらいだろうと思っていたが、想像をはるかに超える数字に普段は冷静な現場スタッフも驚きを隠せないでいた。

数字はあくまで数字だけれど、いじめなど積極的に認知をしていこうという動きから増加傾向にあると考えられるものとは違い、不登校はむしろ時代に逆行してまだまだその数を減らしていこうとする行政の動きも多く聞く。

それでもこれだけの数字を叩き出すということで、今までどれだけ訴えかけても届かなかった危機感が社会に芽生えることを願ってやまない。

当然その危機感は不登校児童生徒数が過去最多になったことではない。

不登校の親子は社会で孤立している

例えばこの数字。

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学校内外で相談・指導などを受けていない割合も2019年が29.6%だったのに、2020年は34.3%、2021年度は36.3%になっている。

3分の1の子どもたちが相談することもできていないということは、逆に言えば我々支援者はそれだけの子どもたちに全くリーチできていないことがわかる。

子どもたちが不登校になったとしても、仮に保護者を含めて手厚くフォローがされ適切な支援やサポートに繋がっているのだとしたら、それが数字に表れてもおかしくないと思う。

小中学校の先生方からお聞きするとても大変な状況だと思うことの一つは、「どれだけ不登校対策や支援をしようと試行錯誤しても、それが物理的に届かない・届けられない家庭もある」ということ。

フリースクールに相談に来られる保護者の方の話しをお聞きしていても、学校や先生との信頼関係を維持することができなくなり、誰にも相談できずに「ここ」に来られたというケースも多い。

不登校児童生徒数が増加ということよりも、不登校という状況に陥ることで社会から孤立することの方が今すぐに解決するべき社会課題だと考えています。


この数字には表れていない所で、我が子が不登校になれば保護者は仕事をやめ毎日学校に付き添っていたり、家庭内で四苦八苦しながらどうにかこの子をもう一度学校に通えるようにとがんばったり、適切な教育を届けようと必死になっている。

「家庭や本人の責任でもない」、「学校に行かなくてもいいよ」と言い、「休養の必要性」を謳うのであれば、なおさらそんな状況に置かれている家庭への支援を進めることは急務であると感じている。

また、2021年度の小学生は,622万3千人で,前年度より7万7千人減少し,過去最少。

2020年度も、小学生の総数は636万8千人から630万人に減っていた(67,857人減)。

子どもの数が過去最少なのに、不登校の子どもは過去最多を更新している。

中学生はクラスに2人が不登校という数字だけれど、フリースクールの現場でよく言われているのが、不登校の子どもの低年齢化ということ。

これも、文科省の統計で顕著に表れているのが近年の兆候だと感じる。

子どもの自死

もう一つ、不登校児童生徒数よりも注目したいのは、子どもの自殺に関する問題。

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6~18歳の子どもの自殺者数(文科省)

文科省と警察庁の調べで数字は異なるが、ひとまず文科省調べでは去年よりも高校生の子どもの自死は減ったが小中学生の命をこれだけ失ってしまっている。

辛いけれどもこの数字に大人は真摯に向き合わなければいけない。

子どもの命を守ろうと親は外に向かう子どもに色んな物を持たせるけれど、子どもが誘拐されるよりも自死してしまう方が多いのが現状だ。

相談窓口はSNSでも対応できるようになり、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーへの予算は増えてはいるものの、子どもの自死に歯止めをかける有効な手立ては見つかっていないと感じる。

コロナが流行る前から不登校の子どもは増え続けているけれど、今回はフリースクールから見た不登校児童生徒数がコロナ禍で増え続けてた原因をまとめたい。


①親との距離が縮まる

思春期の子に多かったのが、今までは親との距離を保つことができていたからこそ関係性を維持していた親子が、コロナ禍でのリモートワークが増えたことにより家庭で顔を合わせなければいけない時間ができたことで部屋にふさぎ込んでしまったというケース。

物理的な距離が思うように取れないことによる関係性の拗れから不登校になることもある。
もちろん、コロナ禍で家庭での関係性がよくなったという例も聞くが、私たちの元には中々届かない。

②親との距離が離れる

①とは逆で、今までお母さんを中心に適切な関わりや信頼関係を保つことができていたにも関わらず、コロナ禍での収入減から共働きにならざるを得なくなったり、シングルで必死に支えてきたけどますます時間が取れなくなり子どもがひきこもってしまったというケース。

早期に経済的な支援さえあれば、と眉間に皺を寄せてしまう。

③子どもへの期待値が高まる

コロナ禍で分散登校やリモート授業があった時は、不登校の子が出席で着たり登校できるようになったという嬉しい事例も聞くことができメディアでも取り上げられたけど、それを機に子どもに対して先生や保護者からの期待値が高まり子どもがプレッシャーを感じますます学校から足が遠のいたというケース。

いつでもその子どもに合った適切な支援や声掛けと、子どもの想いを大切にしたい。

④学習のスピードについていけない

休校からの遅れを取り戻そうと一気に速度が速まった授業のスピードについていけなくなったケース。

これまではなんとかついていっていた子、先生の手厚い支援でギリギリ学校に通うことができていた子がこぼれ落ちていった。

学校が負わなければいけなくなった負担のしわ寄せが子どもや保護者にまでいってしまい、不登校になった子どももいる。

⑤子ども同士でのトラブル

いじめや暴力などの問題行動も不登校と同じようにこの統計では出ていて問題視されているが、このコロナ禍で子どもたちへの物理的・精神的負担が増えたことは想像に難くない。

そのストレスのはけ口として優しい子たちは標的にされ行き場を失った。

そんな子たちがたくさんフリースクールには相談に訪れる。


万策尽きたお母さん・お父さんがボロボロになって最後の砦として扉を叩くのが「ここ」だ。

校内フリースクールも不登校特例校も教育支援センターもいいけれど、学校だけではどうにもならない現状を受け止めて、まず一番に家庭への金銭的支援や必要な情報を届けてほしい。

それだけで解決できることはたくさんあることを、フリースクールではイヤというほど見てきた。

我が子が不登校になると、お母さんは社会で孤立する。

誰にも相談できずどこにも行けず、どこで休まるわけでもなく誰が助けてくれるでもない。

そんな状況を絶対に変えなければいけないと社会全体で立ち上がるという姿勢を見せてほしい。

もちろん、それは我々が担う部分もある。

教育委員会や相談機関・医療機関やNPOなどとも連携をしながら、声なき声に耳を傾け必要な支援を創り続ける。

それでも全然力が足りない。

支援が届かない。

「まずは、この現状を知ることから」なんて、何年言ってるんだ。

もう十分知ってるだろと、思う。

少しずつ、ほんの少しずつだけど、社会が変わってきていることに喜びを感じることもないことはないけれど、歯を食いしばり変わらない現実を目の当たりにすることの方が圧倒的に多い。

今回の数字を見て、何が原因と考えられて、何が足りなくて、何ができるのかをもう一度皆さんと考え動きたい。

最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。