不登校の子どもはなぜ増えた?理由と対処法を解説
不登校の子どもが増えている背景には、家庭・学校・社会のさまざまな変化が重なり合って生まれる複雑な事情があります。学業への負担、人間関係のストレス、家庭内コミュニケーションの減少、生活リズムの乱れなど、子どもが抱える要因は多岐にわたります。
不登校は決して「怠け」や「甘え」ではなく、子どもが抱えきれない困難のサインです。原因を一つに絞るのではなく、子どもの心と周囲の環境を丁寧に見つめ、必要な支援につなげていく姿勢が求められています。当記事では、不登校の子どもが増えている理由とともに、不登校を解消するために取れる手段を解説します。
【この記事はこんな方におすすめです】
- 不登校の子どもが増えている理由を知りたい方
- 子どもの不登校の理由を知りたい方
- 子どもが再び学校に行けるようになってほしい保護者の方
目次
不登校の子どもは増えている?

文部科学省の調査によると、小中学校の不登校児童生徒数は年々増加しており、近年は過去最多を更新し続けています。小学校では13万7,704人、中学校では21万6,266人と、合わせて約35万人にのぼります。前年からの増加率自体は小中ともに鈍化しているものの、依然として高い水準にあることが分かります。
不登校の背景として多いのは、「学校生活に対してやる気が出ない」という無気力に関する相談(30.1%)で、次いで生活リズムの乱れ(25.0%)、不安・抑うつ(24.3%)など、子どもの心身の不調が大きく関係しています。不登校は単なる「怠け」ではなく、環境変化や心の負担が積み重なった結果として生じているケースが多いと言えるでしょう。
(出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」)
不登校の子どもが増えたのはなぜ?
不登校が増え続けている背景には、1つの理由だけでは説明できない「複合的な変化」があります。家庭・学校・社会全体の変化が重なって、子どもが学校に行きにくい環境が広がっていると考えられます。ここでは、不登校の子どもが増えている理由を6つ解説します。
学校環境の変化
近年、学校が子どもにとって「安全で安心できる場所」でなくなりつつあると感じるケースが増えています。いじめや仲間関係のトラブルは昔から存在しましたが、現在はSNSの普及によって、学校の外でも人間関係のストレスが続くようになりました。
また、教室の雰囲気や友達関係になじめない子どもも増え、集団生活そのものが負担に感じられやすくなっています。こうした小さなストレスが積み重なることで、学校へ行く気力がなくなってしまう子どもが増えているのです。
家庭環境の変化
不登校の背景には、家庭環境の変化も大きく関わっています。共働き家庭の増加により、保護者が忙しく、子どもとじっくり向き合う時間が減っている家庭も多くあります。コミュニケーション量が少ないと、子どもが抱える不安やストレスを早期にキャッチしづらく、孤独感が膨らみやすくなります。
また、家庭内でのパワーバランスが子ども側に偏り、「叱らない育児」が誤った形で広がった結果、子ども自身が感情コントロールを苦手とするケースも増えています。家庭が安心できる場所でなくなったり、子どもが甘えられる相手が少なくなったりすることで、学校のストレスを受け止める余力がなくなり、不登校へつながるケースがあります。
教育制度や勉強へのプレッシャーの影響
現代の子どもたちは、これまで以上に学業面のプレッシャーを受けやすい状況にあります。受験競争の激化や学力格差の広がりによって、低学年のうちから塾や習い事に通うケースが増え、学ぶことが「ストレス源」になりやすくなっています。学校の授業についていけないと劣等感を抱き、登校そのものが苦痛になる子も少なくありません。
また、画一的なカリキュラムによって、個々の特性に合った学び方がしづらいことも原因の1つです。発達の特性や理解のペースが合わない子にとっては、学校が「頑張っても報われない場所」になってしまい、自己肯定感を大きく損ないます。「勉強が怖い」「先生に怒られるのがつらい」といった不安が重なることで、学校から距離を置くようになるケースも増えています。
コミュニケーションの減少
SNSやネット動画が日常化したことで、家庭や学校でのコミュニケーション量が減っていることも、不登校増加の一因とされています。かつてはテレビ番組や流行の音楽など、家族や友達全員が「同じ話題」を共有していました。しかし今は、子どもが触れる情報が細分化され、親も友達も子どもの世界を理解しにくくなっています。その結果、家庭では会話が業務連絡のみになり、学校でも趣味が合う友人が見つけにくいなど、つながりを感じにくい環境が広がっています。
人との関わりがうまく築けないと、学校で孤立しやすくなり、居場所を失ってしまうこともあります。こうした「会話の減少」「つながりの希薄化」が、子どもの心にじわじわと負担を与えています。
精神的な問題
精神的な不調は、不登校の大きな要因の1つです。不安・抑うつ・気分の落ち込みなど、心の健康に関わる悩みを抱える子どもは年々増えています。思春期はもともと心が不安定になりやすい時期ですが、現代の子どもたちはSNSや学業、人間関係などのストレスが重なり、十分に休息を取れないまま限界に達してしまうことがあります。
また、睡眠リズムの乱れも心の不調を招きやすく、不登校と密接に関連しています。心が疲れ切った状態では、学校に行く気力を持つこと自体が難しくなります。
多様性の拡大
価値観が多様化した現代では、「学校に行くことが当たり前」という見方が薄れつつあります。SNSやメディアで「無理して学校に行かなくていい」という意見が広く共有され、親や子どもの選択肢が増えたことは良い面もありますが、学校が合わないと感じたときに登校を続ける理由が見つけにくくなる側面もあります。
また、フリースクールやオンライン学習など、学校以外の学び方が普及したことで、従来の学校生活に馴染めない子どもが別の道を選びやすくなりました。多様性の拡大は決して悪いことではありませんが、環境が整っていないまま学校を離れてしまうと、孤立や生活リズムの乱れにつながる可能性もあるので注意が必要です。
不登校を解決するためには?

不登校を解決へ導くためには、子どもの気持ちを理解しながら、できることを1つずつ積み重ねていく姿勢が大切です。まずは「今つまずいている状態をどう支えていくか」という視点で考えるように意識しましょう。ここでは、不登校を解消するための手段をいくつか解説します。
原因を追及しすぎない
不登校が続くと「理由を知りたい」「原因をはっきりさせたい」と考える保護者は多いですが、無理に聞き出そうとすると、子どもに大きなストレスがかかってしまいます。
不登校の理由は、人間関係のつまずきや学習の遅れなど様々で、本人もうまく言語化できないことがあります。説明しにくい悩みを抱えている場合もあり、追及されることで混乱したり自己否定につながったりすることもあります。
まずは「原因を探ることよりも、安心して過ごせる状態を整える」ことを優先しましょう。子どもが「親は自分の味方だ」と感じられるよう寄り添う姿勢が、次の一歩につながります。
他者との関わりを持つ
不登校の状態が長引くと、家族以外との関わりが極端に減り、「人と話すのが不安」「外に出るのが怖い」と感じてしまう子どももいます。人間関係のつまずきがきっかけの場合、そのまま孤立が続くことで不安がさらに強まり、復帰のハードルが高くなることもあります。
まずは、無理のない範囲で専門家や相談機関、スクールカウンセラーなど、学校外の大人と関わる機会をつくることが大切です。話を聞いてもらうことで安心感が生まれ、徐々に他者とのコミュニケーションに慣れることができます。
学校以外の学びの場を活用する
学校に行きづらい状況が続いても、学びの機会を失わないようにしましょう。近年は、フリースクール・塾・オンライン学習・家庭教師など、子どもの状況に合わせて選べる学びの場が増えています。
特にフリースクールは、不登校の子どもが過ごしやすい環境づくりに力を入れており、学校長の承認があれば出席扱いになるケースもあります。「学校には行けないけれど、勉強は続けたい」「少しずつ外の世界とつながりたい」という子にとって、学校外の学びは大きな支えになります。
まとめ
不登校は、子どもが直面する心身の負担や環境の変化が積み重なった結果として起こるものであり、単純に原因を特定できるものではありません。大切なのは、子どもの状態を否定するのではなく、「今つらい状況にある」という事実をまず受け止めることです。
子どもは一人ひとり異なるペースで成長します。無理に学校へ戻すのではなく、その子に合った環境を整えながら、少しずつ未来への選択肢を広げていくことで、より健やかな自立を目指せるでしょう。