学校に行けない子供への接し方は?NG対応や不登校の原因も解説

近年、学校に行けなくなる子供の数が増え続けています。文部科学省の調査によると、小・中学校で不登校の児童生徒は約34万人、高校でも約7万人にのぼり、その数は年々増加傾向にあります。
子供が学校に行けない背景には、単なる「怠け」や「甘え」では片づけられない複雑な理由が隠れています。学校生活や人間関係でのストレス、心や体の不調、生活リズムの乱れなど、その要因はさまざまです。
当記事では、子供が学校に行けなくなる理由と、親としてどのように接すればよいのか、逆に避けるべき対応について詳しく解説します。大切なのは、子供の気持ちに寄り添い、安心できる環境を整えることです。親としてできることを一緒に考えていきましょう。
【この記事はこんな方におすすめです】
- 子供の不登校に悩んでいる方
- 子供への接し方が分からない方
- 不登校の子供ときちんと向き合いたい方
目次
学校に行けない子供は多い?
文部科学省の「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」とよると、小・中学校における不登校の児童生徒数は346,482人に達しました。これは前年度から47,434人(15.9%)増えており、11年連続で増加しています。
また、高等学校においても不登校生徒数は68,770人に達しました。在籍生徒に占める不登校の割合も2.4%に上昇しています。このように、学校に行くのが辛い子供は確実に増えてきており、決して特別な存在ではなくなっています。
(出典:文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」)
子供が学校に行けなくなる理由
学校に行けなくなる理由は、子供たちの置かれた環境や心身の状態によってさまざまです。文部科学省の調査によれば、小・中学校の不登校児童生徒については「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」(32.2%)が最も多く、次いで「不安・抑うつの相談」(23.1%)、「生活リズムの不調に関する相談」(23.0%)が挙げられます。これらは、学校生活や人間関係の中でのストレス、心身の不調が背景にあることを示します。
高校生の場合も同様に、「学校生活に対してやる気が出ない」(32.8%)、「生活リズムの不調」(26.7%)、「不安・抑うつ」(16.7%)が多く、進級やクラス替え、進学による環境の変化への適応が難しいことも影響しています。
不登校の背景には、単一の理由ではなく複合的な要因が絡み合っています。
(出典:文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」)
学校に行けない子供への接し方
子供が学校に行けなくなったとき、親としては不安や戸惑いを感じるものです。しかし、まず大切なのは、子供の心の状態に寄り添い、安心できる環境を整えることです。
不登校は、決して甘えや怠けではなく、心や体が助けを求めているサインです。無理に登校を促すのではなく、子供の気持ちを受け止め、少しずつエネルギーを取り戻せるようサポートしていく姿勢が求められます。ここでは、具体的な接し方のポイントを紹介します。
「休んでもいい」ことを伝える
学校に行けない子供は、「休みたいけれど休んではいけない」という葛藤の中で苦しんでいることが少なくありません。だからこそ、親から「休んでもいいよ」と言葉にして伝えることが大切です。その一言が、子供の心を軽くし、「自分はひとりじゃない」「親は味方でいてくれる」と安心するきっかけになります。
休むことを認め、ゆっくりと好きなことをしながら心身のエネルギーを回復できるよう見守りましょう。
子供の話を否定せずに聞く
自分自身が学校に行けない理由をうまく言葉にできない子供も多くいます。無理に問い詰めたり、理由を追及したりすると、相手はますます心を閉ざしてしまいます。
まずは、子供が口にした言葉や気持ちを否定せず、「そうだったんだね」「話してくれてありがとう」と受け止める姿勢が大切です。親が安心できる存在になることで、子供は次第に気持ちを整理し、自分の思いを少しずつ話せるようになります。
子供が安心できる環境を整える
学校に行けない子供は、日々の中で強い不安やストレスを抱えています。そんな中、家庭だけは安心できる場所であることが大切です。
学校に行けないことを「甘え」「わがまま」と決めつけるのではなく、子供の不安な気持ちに寄り添い、まずは落ち着ける時間と空間を作りましょう。ゲームやマンガ、好きなことをして過ごす時間が、心を癒し、元気を取り戻す助けになります。親が理解を示すことで、子供の気持ちも次第に安定していきます。
接し方を変えない
不登校になったからといって、親の接し方を変えてしまうと、子供は「自分は他の子と違うのか」と不安を感じてしまいます。家庭では、これまで通りの穏やかな声かけや接し方を心がけましょう。親の姿勢が変わらず安心感を与えることで、子供も少しずつ自分のペースを取り戻せるようになります。
「不登校だから」と特別視せず、家では自然体で過ごせる時間を大切にしてください。
学校に行けない子供へのNG対応
子供が「学校に行きたくない」と言い出した時、不安に感じるのはよくあることです。少しでも元気に登校してほしくて、つい間違った対応に出てしまう場合も少なくありません。しかし、NG対応を続けると子供の負担はますます大きくなってしまいます。
ここでは、学校に行きたくなくなった子供に対して「してはいけないNG対応」と理由を解説します。
無理に学校に行かせる
子供に対して、「いいから学校に行きなさい」と無理に登校を強制してしまうと、子供の負担はますます大きくなります。そもそも、「行きたくない」と言っている裏には、不安や苦しさ、対人関係の悩み、学業に対する負担感など、必ず理由があるものです。その理由に寄り添わずに無理に登校を求めても、子供はますます苦しくなるばかりです。
結果として、「親に気持ちを話しても分かってくれない」と心を閉ざしてしまい、問題解決が遠ざかってしまいます。まずは子供の気持ちに寄り添い、安心して話せる空気を作ってあげましょう。
学校に行けない理由を追及する
「なんで行きたくないの?理由を言って」と子供に詰問しても、答えてくれなくなるばかりです。子供自身も理由を整理して言語化するのは難しく、「理由なんて分からない」と苦しく感じてしまいます。その状態で理由を追求し続けると、子供はますます心を閉ざしてしまいます。
理由を無理に言語化させようとせず、「話したくなった時に話してくれてよいよ」と寄り添う姿勢こそ、子供に安心感を与えます。
3他人と比較する
「他の子は休まずに行ってるよ」と他人と比較する言葉は、子供に大きなダメージを与えてしまいます。比較された子供は、「私はダメなんだ」と自己否定に陥ったり、「家族にとって負担にしかならない」と悲しく感じたりして、自信を失います。
子供にとって大切なのは他人と足並みを揃えることではありません。比較ではなく、子供自身にしかないよさを認め、励ます言葉を心がけましょう。
学校に行かないことを責める
「なんで行かないの?」「怠けてるだけじゃない?」という言葉は、子供に深い傷を負わせます。子供自身も「このままじゃダメ」と分かって悩んでいます。その状態に対して責め続けても、自信や自己肯定感を失うばかりです。
大切なのは、「辛い気持ちに寄り添う」という視点です。責めなくても、子供は必死に悩み、苦しんでいます。その気持ちに寄り添うことで、安心して次の一歩にチャレンジする勇気を培うことにつながります。
まとめ
子供が学校に行けなくなったとき、親としては不安や戸惑いを感じるものです。しかし、不登校は決して甘えや怠けではなく、子供の心や体からの大切なサインです。無理に登校を促したり、理由を問い詰めたり、他人と比較したりすることは、かえって子供を追い詰めてしまう原因になりかねません。
大切なのは、子供の気持ちに寄り添い、「休んでもいい」という安心感を与えること、話を否定せずに耳を傾けること、そして安心できる家庭環境を整えることです。不登校は一時的な状況であり、子供のペースで前に進むためのサポートが求められます。どんなときも、子供の味方でいる姿勢を大切にして接しましょう。